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もう日盛りの時刻はとつくに過ぎていたとは云へ、半ば傾いてそのためによけい濃くなつた日ざしは河原町の上に、それに沿つてゆるく曲つた川、周囲の山地の上に、こゝぞといふ風に照りつけていた。
さう声をかけながら、練吉は近眼鏡の下から切れ目をぱちぱちさせ、気安げに、眠つている道平の顔の上にのぞいた。
「さうです」
「それは、小規模な演習だからして居らん」
相手が急に三人にふえたためか、柵の中の長身な男は一層興奮した。
「ふむ、ふむ。――どなたでしたかね。お名前は?――ふむ、ふむ。――住所は?いや、字あざはどこでしたかな――ふむ、ふむ」
練吉はさういふ今泉の足もとを見、更にじろりと皺一つよらない衣裳を見上げた。何か疳にさはつたやうな色が動いた。そして、一言できゆつと相手をへこまさうとする時のやうに、神経的に口を曲げ、今にも云ひ出さうとした時、少し離れたところから手招きしている房一と小谷とに気づいて、そのままそつちへ行つてしまつた。
「すると、何ですか、十年契約といふやうなことにでもなすつたんですか」
「あん」
「もう一人後から来るかもしれませんが、そしたらよろしく頼んます」
「大石の御老人は見えんやうだな」
「なに?」
一わたり済むと、練吉は最後にもう一度注意深く病人の顔をぢつと眺め、